2022.01.25 / Topics
FSC認証とは?制度の仕組みからFSC認証マークの意味までわかりやすく解説。
森林や動植物、人権にも配慮され、適切に管理された森林にのみ認められるFSC認証。
森林の認証だけでなく、その加工・流通過程まで審査をすることで、消費者は適切に管理された商品を誤りなく選択することができます。SDGsとの関連性も高いため、今後建築・ものづくりメーカーを中心にあらゆる産業でさらなる関心の高まりが期待されるでしょう。
この記事では、FSCについて、その認証制度の仕組みやこれまでの変革、ロゴマークのもつ意味などをわかりやすくご紹介します。
FSC認証について全く知らない方でも全体像を理解できるような内容になっていますので、最後までご覧ください。
1. FSC認証とは?
FSC認証(Forest Stewardship Council / 森林管理協議会)とは、環境や社会に対して持続可能な森林管理のもと作られた製品を認証する制度です。
持続可能な森林管理には、森林環境の保全だけでなく、生物の保護、地域社会との関係性、先住民族や労働者の権利、合法性なども含められており、SDGsの観点からも有効な認証制度となっています。(具体的な森林管理の視点はFSCによる「FSCの原則と基準」にまとめられています。)
また、認証には森林管理からその流通に至るまでサプライチェーン全体を審査するシステムが設けられており、その審査はFSCとは異なる第三者の認証機関が認証を行うことで、透明性も守られています。認証を受けると製品にFSCマークが記載され、消費者は森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品を選択することができます。
つまりFSC認証とは、適切な森林管理を認証し認証製品にはFSCマークをつけることで、消費者が環境や地域に配慮された製品を選びやすくなり、森林の保護を促進する制度ということです。
このFSC認証は、世界の森林管理のあり方を変えるアプローチとして多くの国で活用されており、現在では世界89ヵ国2億3022ヘクタールの森林が認証されています。日本でもFSCの認知度は、2017年の18%から2020年の21.9%へと向上しており、さらなる関心の高まりが期待されます。
2. FSCの変遷
世界の森林減少は今に始まったことではなく、1990年代、世界の森林の利用と保全に対する関心が高まり数多くの国や団体によって環境保全の議論がなされてきました。
そして1992年、ブラジルのリオデジャネイロにて地球サミットが開催されます。環境NGOは、以前の取り組みでは森林環境を改善することは難しいと繰り返し主張していましたが、森林減少の抑止に向けた合意や法的枠組みを生み出すことができず、地球サミットは失敗に終わります。
しかし、木材生産者、流通業者、環境団体、人権団体の代表が米国カリフォルニア州に集まり、改めて、林産物が適切に管理された森林から責任をもって生産されたことを証明するシステム、つまり森林認証とラベリングの必要性が確認されます。
そして1994年、Forest Stewardship Council (森林管理協議会)通称FSCがWWFを中心に設立されます。1993年に行われた設立のための総会には、26ヵ国から130人もの人が参加していました。
その後FSCは徐々に拡大し、国際的なイベントでも優先的に使われるようになりました。
3. FM認証とCoC認証によるチェック
FSC認証は、FM(Forest Management)認証とCoC(Chain of Custody)認証と呼ばれる2種類の認証によって成り立っています。
まず、FM認証とは、FSCの理念である「環境保全の点から見ても適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理」を具体化したものです。
適切な森林の管理、経営に対して適応される認証で、FSC森林認証の10原則、70の基準、そして細かい指標に則って、FSCが認めた第三者機関が認証します。日本でも35件の森林がFM認証を受け、その総面積は42万ヘクタールにもなります。(2021年6月時点)
そしてCoC認証とは、サプライチェーン全体を通じて、FSC認証原料がきちんと認識され、他の原料と分別されているかを確認する認証です。製造、加工、貿易、流通などすべての事業者が対象となり、小売を除くすべての関係事業者がCoC認証を取得しなければ、FSC認証製品として扱うことができません。
仮にFM認証を取得した木材で、CoC認証を取得した加工業者によって加工されたものであっても、CoC認証を取得していない流通業者が物流に関わるとFSC認証製品として取り扱うことができなくなります。
FSC認証は、木の履歴書としてトレーサビリティが確保されているのです。このように、生産過程だけでなく加工、流通に関わるすべての組織が認証を受けることで、持続管理な森林管理の基準をクリアした製品が消費者のもとに届いています。
4. FM認証取得の基準となる森林管理10の原則と70の基準
FSCでは、10の原則、70の基準が設けられています。
この原則はFM認証の認証の際の基準となっており、ポイントは「森を守ること」だけにとどまらず労働者や先住民族の人権、地域社会との関係や文化など、広い視野で考えられているところです。この原則・基準は国際的に共通ですが、基準の下の指標については国・地域の実情なども考慮され地域ごとに策定されています。
5. 3種類のFSC認証マーク
FSCの認証製品に使用され、FSC認証を示すFSCラベルですが、その種類は以下の3種類があります。
①FSC100%
FSC認証林からの原料を100%使用している製品。
②FSC ミックス
FSC認証森林からの材料に加え、FSCが認めている材料を複数組み合わせている製品。
FSC認証材の割合が70%以下の場合はラベルの使用が認められていません。非認証材についても基準が厳しく設けられ、違法に伐採された木材や、人権を侵害して伐採された木材など管理木材※は含めてはならないとされています。
※管理木材とは、FSCが定めている、「FSCが容認しない5つの木材カテゴリー」のことです。
・違法に伐採された木材
・伝統的権利、人権を侵害して伐採された木材
・ 高い保護価値を有し、その価値が施業活動によって脅かされている森林で伐採された木材
・天然林の転換を目的とした伐採によって搬出された木材
・遺伝子組み換え樹木が植えられたエリアから伐採された木材
が管理木材とされています。
③FSCリサイクル
100%リサイクルされた原材料から作られた製品。
木材製品の場合は、原材料の70%以上がリサイクルである場合につけられます。リサイクルの原材料を利用することについても、間接的に森林保護につながるとし、FSCはラベルの使用を認めています。
また、ラベルには以下の内容が記載されています。ライセンスコードとは、認証取得者ごとの番号です。FSCジャパンのホームページ内にある「認証取得者の検索」で番号を入力すると、認証取得名や認証取得日などの情報を閲覧できます。
6. 身の回りにあふれるFSC認証の商品
FSC認証の商品は、お菓子のパッケージやティッシュ、木製品など、実は身近なところにたくさんあります。
最近では、年賀状のFSC認証紙の使用や東京オリンピック会場でのFSC認証材の利用が注目を集めました。
皆さんの身の回りでもFSCマークを探してみてくださいね。
7. まとめ
FSC認証は、森林環境だけでなくそこで生きる先住民や労働者などの権利も守る認証制度です。積極的にFSC認証を導入する、選択することで世界の森林環境の向上に間接的に貢献することができます。トレーサビリティや認証機関の透明性も確保されており、信頼できる認証制度と言えるのではないでしょうか。
8. 中村製材所について
中村製材所では、FSC認証材、特に国産の地域材の小径木に着目し、それを有効的活用した次世代突板『SKINWOOD®』を開発しました。森林資源の保全や環境を守り、地域の誇りを取り戻すこと、安全・安心な暮らしをサポートすること、地域経済の活性化を目指した取組です。
SKINWOOD®について詳しく見る→
■参考サイト
FSC Japan:https://jp.fsc.org/jp-ja
森林認証概論:https://jsfmf.net/kadai2-2/certification/gairon/general_view_by_cis.htm
FSC認証とは?:https://shitte-erabo.net/aboutfsc/certification/
A history of forest certification:https://www.researchgate.net/publication/228396698_A_history_of_forest_certification
森林ビジネス革命-森林認証がひらく持続可能な未来
FSCの原則と基準:https://www.pref.yamanashi.jp/miryoku/shizen/mori/documents/fsc_leaflet_gensoku_kijyun.pdf