2022.01.27 / Topics
[海外におけるSDGsの事例5選] 建設業界を中心にご紹介
2015年に策定された国際目標のSDGs。17のゴールと169のターゲットから構成され、様々な業界、地域、コミュニティで達成のための取り組みがなされています。
この記事では、建設業界を中心にSDGsに関する海外の事例をご紹介します。海外のSDGs関連の先進的取り組みを調査している方や、SDGsに関心のある建設業界の皆様はぜひご覧ください。
1.SDGsとは
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの頭文字をとった言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」。
2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されており、2016年から2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。全部で17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。
前身となるMDGsは先進国により決められたもので地域の偏りもあったのに対し、SDGsは発展途上国も先進国も境界のない普遍的なものとなっています。
2.世界の気候変動をめぐる現状
では、SDGsは着実に進んでいるのでしょうか?
国連が発表した2021年の持続可能な開発目標報告によると、2020年の地球の平均気温は産業革命前と比べ1.2度上回っており、パリ協定が定める1.5度以内に収まる目処がたっていません。
また、海洋生物が生息できないデッドゾーンの増加やコロナによる世界の飢餓の悪化、極度の貧困の増加など各方面でさらなる協力体制が必要とされています。
目標15の森林に関しても、この20年間で1億ヘクタールもの森林が失われ、生物多様性領域の保護は5年間停滞しているなど、森林をめぐる環境保護も改善の必要があるように思われます。
一方、SDGsの14個の目標にも影響する、FSC認証の認証件数が増加するなど、前向きな報告もありました。
3.海外の取り組み5選
日本も含め、世界ではSDGsの達成に向けて各方面で取り組みがなされています。ここからはSDGsの達成に向けた世界の取り組みを、建築業界の事例を中心にご紹介します。
①SDGs17個全ての目標を網羅するUN17village
デンマークで立ち上がっているのが、エコ・ビレッジ建設プロジェクト。
エコ・ビレッジとは、世界で初めてSDGsの目標17全てに取り組むプロジェクトで、35000平方メートルの土地に子供からお年寄りまで最大800人が暮らせる住宅と複合施設が建設される予定です。
建設を担当するlendager groupのAnders Lendager氏は「私たちはリサイクル素材からできた象徴的な建物を作るのではなく、持続可能なライフスタイルの機会も創り出したい」と話しており、ライフスタイルそのものにも焦点を当てているようです。
建物にはリサイクルのコンクリートや木材、アップサイクルの窓が使われるほか、各屋上には太陽光発電を設置し、100%再生可能エネルギーで賄うことができます。また、水分は貯水施設で毎年150万リットル補われ、屋上には生物多様性を促す屋上庭園なども併設される予定です。
その他、人々のコミュニケーションの機会を増やすために、施設の3000平方メートルは住民と地域の人々が交流するための共同スペースに充てられるといいます。
②FSC認証取得のフローリング
イギリスを拠点とするフローリングメーカーTed toddは、イギリスで初めてFSC、CoC認証を取得したフローリング会社です。現在、製品の90%にFSC認証などの森林認証を取得し、色調や厚さなど様々なフローリングを販売しています。
また、資料や印刷物印刷物に使われる紙は100%FSC認証紙。これまで以上に顧客は環境に対する信頼性や認証を求めていると言います。
③ポップコーンでできた断熱材
住まいにとって重要な役目を担う断熱材。
ドイツのゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンによると、現在世界の断熱材は90%が鉱物繊維かプラスチックで作られています。それに置き換わる断熱材として2021年11月、同大学はポップコーン素材の断熱材を発表しました。
特徴は、植物ベースで環境にやさしく、優れた断熱性と防火性を兼ね備えている点です。使用後はリサイクルやバイオガス生成の燃料にすることができると言います。
また、撥水性もあり発泡スチロールに代わる梱包材としても利用される予定で、今後の商品化に注目が集まりそうです。
④オランダの解体を前提とした複合施設「Circl」
オランダのメガバンクABN AMRO(エービーエヌ・アムロ)の施設は、サーキュラーエコノミーの考え方に基づいて建設されています。
その名も循環を意味する「Circl」。
同施設はABN AMROのオフィスでありながらも、レストランやバー、イベントスペース、セレクトショップなどが併設され、誰もが気軽に訪れることができるようになっています。
施設の建物は解体を前提に建築されているため、柱と梁、アルミニウムや金属は全て取り外しができ、再利用可能です。
使われている床、窓、会議室の家具などは他の建物を取り壊した際に引き取ったものが利用されています。
また、断熱材は1万6000本の履けなくなったジーンズ、防音材は着られなくなった従業員ユニフォームでできています。
支柱として使われている建材は、全てFSC認証材です。通常より太めにすることで、施設解体後、表面を削って再利用できるように考えられています。
このように、資材には廃棄物や森林認証材を使い、解体後も資源を活用できるようにすることで、地球環境への負荷を減らしています。
⑤洪水対策にも。プラスチック1トンを使った自転車専用道路
2018年、オランダのズヴォレ市に世界初のプラスチックでできた自転車専用道路が誕生しました。
この自転車専用道路は全長30メートルで、21万8千個に相当する約1トンのプラスチックカップと50万個のペットボトルのフタからできています。
この30メートルの道路は、通常のコンクリートやアスファルトの道と比べて50〜70% CO2の排出を削減したと言います。レゴのように構造用パーツを組み合わせて敷設するため、敷設にかかる時間を70%削減でき、通常の道路より4/1の重量と軽いのも特徴。
さらに、オランダでは大雨やゲリラ豪雨の発生により、洪水や地盤沈下がもたらされていますが、内部を空洞にすることで雨水を一時的に貯留することが可能となりました。このprastic roadプロジェクトは成功し、2020年には会社が設立されるなど、今後の展開が注目されています。
4. まとめ
再利用やFSC認証の資材を用いたサスティナブルな建物やプラスチックボトルからできた道路など、様々な事例をご紹介してきました。日本でも、SDGsや環境への取り組みは企業の責任の一つとなり、ますます重視されつつあります。今後の取り組みとして、参考になれば幸いです。
5. 中村製材所について
中村製材所では、FSC認証材、特に国産の地域材の小径木に着目し、それを有効的活用した次世代突板『SKINWOOD®』を開発しました。森林資源の保全や環境を守り、地域の誇りを取り戻すこと、安全・安心な暮らしをサポートすること、地域経済の活性化を目指した取組です。
■参考文献
https://www.dezeen.com/2018/12/10/un17-village-eco-housing-copenhagen-lendager-group-arstiderne-arkitekter/https://www.un17village.dk/en#movement
https://www.fsc-uk.org/en-uk/about-fsc/what-is-fsc/case-studies/wood-products/ted-todd
https://www.uni-goettingen.de/en/3240.html?id=6481
ttps://ideasforgood.jp/2020/01/27/circl/https://circl.nl/over-circl
https://www.dutchnews.nl/news/2020/05/recycled-plastic-roads-ready-for-rollout-after-bike-paths-prove-successful/https://plasticroad.com/over-ons-team/#historie